その豪華な扉のうち、一番豪華な扉の前にシェリダンは立ち止まった。扉の前にいる衛兵に自分が来たことを伝えると、衛兵が扉の中に向かって大きな声で言った。
「シェリダン・グリフィン候、ご入来」
 候?!
 ってことは、貴族かよっ
 しかも、侯爵か……。
 そこは謁見の間のようで、上座に玉座があり若い男が座っていてそこに向けて赤いじゅうたんが敷かれている。周囲は黄金で彩られた数々の調度品や美術品が並んでいて、豪華なつくりになっていた。天井を見上げて、きらきら星のように光るシャンデリアに、あれが落ちてきたら痛いだろうなと、どうしようもないことを考えた。
「よくきたな、シェリダン」
 親しそうに玉座に座る男が言った。ロリスや俺たちが膝を付いて頭を下げているのにもかかわらず、シェリダンは直立不動のままだ。
「仕事が終わったんで報告に来たんだ、陛下」
 シェリダンは、物怖じせずに答える。
 玉座に座る男は、メイヒュー国の王様らしい。若すぎ……! 俺より年上だけど。王様っていったら、白いひげが生えてて、どっしりとした威圧感に「うむ」とか偉そうな態度とかしちゃうのを想像してたんだ! ロードオブザリングとか、ロードス島戦記とかそうだろう?! カッケーっと思うような渋い爺さんが、威厳たっぷりに「勇者よ、世界を救え」とか言ったら、俺だったら引き受けちゃうね!
 まあ、確かに威厳たっぷりの渋い爺さん国王にだって、若い頃はあったわけで。歳を取ってからもかっこいいってことは、若い頃は相当かっこいいわけだ。メイヒュー国の王様は、渋い爺さん国王になる資格十分みたいで、端整な顔立ちだった。
 ハリウッド映画に、「若き英雄王」みたいな役柄ででてきそうな正統派の美形だ。軟弱で、城から一歩も出たことないというような、青白い美形じゃなくて、趣味は鷹狩り、剣の腕前は「お前、勇者か?!」と言いたくなるほど上手、という雰囲気の美形王様役として、映画に出てきそうだ。
「ふーん……で、頭の上の砂漠魚をどうするか俺に聞きに来たわけか」
 国王の視線が俺の頭上に向けられる。砂漠魚ときたら、得意げにきゅいきゅいいいながら、空を泳いでいる。
 国王は、さして考えもしないでこういった。
「いいよ。そのままで。成長したらでかくなりすぎて困るだろうけど、保護対象だからしっかり守って育ててやってくれ」
 いがいと、あっさりしてるなー。
「孵化した卵を育てているのは、結局人間だからな。生態を調べるために、定期的に砂漠魚の様子を知らせてくれ」
「こいつが、大人になったら群れに返すんですか? だったら、人間が育てたら戻りにくいんじゃ」
 よくいうだろう。人間の匂いの付いた鳥は育たないって。
「それは、大丈夫だ。砂漠魚は人間以上の知能の持ち主で、時が来れば群れに帰る」
 人間以上って……このお気楽そうに空をふよふよ泳いでいる、こいつが?!


 それ、本当かよ……

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