そんな代物があるなら、頼んで使わせてもらうか、旅人というぐらいなら一緒に攻略してもいいわけだ。しかし、その前にやることがある。
 ここが単なる天然のダンジョンなのか、グラン帝国エンパイアの秘密施設なのか、ということだ。そのことをロリスに言ったら、「気にするな」と言われた。
「ここには、お宝が眠っているという情報があったから掘り返しただけだ。グラン帝国エンパイアの施設? そんなもの無いね! ……とでも言っておけばいい。確かに、グラン帝国がなんかたくらんでそうだが、他国の土地で怪しげなことを行ってるとは、さすがにグラン帝国エンパイアも公にできないだろう。不問にされるさ」
「誘拐された被害者を救出してしまったら?」
「報酬には、犯人逮捕については言及されていない。その場所にいたのでつれて来ました、とでも言っとけ」
 恐ろしい、なんたる肚黒!!
「だが、グラン帝国エンパイアに密かに追われたりしないか?」
「多かれ少なかれ、冒険者は狙われるものさ。俺たちがいままで発掘してきた遺跡だって、国家所有の者が多いんだぜ? そっから出土した品物を売り払ってるし、モンスターだって帝国エンパイアの実験の産物が逃げ出したものだっていわれてる」
「国家所有の遺跡を黙って発掘だなんて、犯罪じゃないのか?」
「この世界に存在する遺跡は全部、その土地を有する国の者だ。『楽園パラディエス』という国があったおかげで、遺跡の数は星の数ほどだ。その全部を国がチェックできるわけではない。法律上は犯罪だが、どの国も容認している……というか、容認するしかない。そこまで管理できないからだ」
 だから、冒険者なんて職業があるんだぜ。とロリスは言った。なんだか知りたくなかった世界の裏側を見てしまった気分だ。
 こうなったら、このダンジョン攻略するしかないかも!

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