私の母、という人物は私は名前だけしか知らない。ものすっごい美人で、現在の王妃と正妻の座を争ったという逸話が残っている。結局は、現在の王妃ユーエンスが勝利を収めたのだけれど、子供のほうはルミーネのほうが早かったというわけだ。ルミーネが亡くなったのが私の生まれた年だったから……ああ、そうか、子供を産んだ所為で宮廷革命が起こりルミーネの産んだ子供、つまり、私の命が狙われたというわけか。
 その後、ユーエンスは跡継ぎとして現在の王太子サーデラインを身ごもり、王位の地位は確固たるものとなったわけだけれど、ルミーネに先起こされたときは、どんなにあせっただろうね。
 私の存在は生まれたときから忌み嫌われていたわけだけど、こんな王宮に戻ってきても大丈夫だったのかな。
「本日は、ミシェーラにこの宮廷内を案内させます。どうぞお好きなところをお回りください」
 ライアの言葉に、ミシェーラがさ、どうぞと手招きしている。
 結局私は、どうやったら広すぎる宮廷内を迷わないで生活できるか、ということを始終考えることになった。

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