王家に引き取られるって言う話だけれど、王様の苗字って何だっけ?
そんなことを思いながら、私は美少年の顔を見つめながら答えた。なんだか、自然にほほが赤くなりそう。
「そ、あまりみかけない娘だなぁ……」
名前を教えてくれるのかと思ったら、そうでもないみたい。どうしよう、この人って自分から名乗らなくても誰だか分かるぐらい有名人なのかしら。
「あの……もし、よろしければ名前を」
さっきの教育係といい、この人といい、城には美形ばっかりがいる。
「僕? ……僕は、セイ。セイ・アラニカだよ」
アラニカ。私の好きな花と同じ苗字だ。
「アラニカさん……?」
私の顔をまじまじと見るものだから、私は不思議そうに問い返した。そうすると、アラニカさんはくすくすと笑って言った。
「僕の名前を聞いて何も反応しなかったのは、君ぐらいかな」
う……やっぱり、有名な偉い人だったの?
見かけは私と同じ年ぐらいの少年なのに。
確か、そう、貴族は自分の家紋の指輪をしているが礼儀だって……とはいっても、私貴族の家紋なんか見たって分からないし。
「ごめんなさい、私、まだ、ここの礼儀になれていなくて。失礼なことをしていたら、謝ります」
私は、座っていたいすから立ち上がって答えた。
「ほんと、面白いね」
私のクラヴィの上においている手をを彼はつかんで言葉を続けた。
「君って、内親王殿下でしょ? 礼儀なんていちいち気にしないでも、君に逆らう奴なんていないよ」
どうして、私の正体を知っているの?!
っていうか、知っていてからかったのね?!
私の思っていることが顔に出ていたのか、セイはくすりと笑って言った。
「この紋章は、そうでしょ? ルシーダ殿下」
セイは私の右手の小指にはめた指輪を細く長い指でなぞりあげる。ぞくっとするような感覚に、自然と体温が急上昇するのが分かる。どうしよう、鼓動も早くなってきちゃった。
いやなんだけど、振りほどけない不思議な吸引力がこの人にはあるみたいだ。