「それに、パルサティラ卿。貴方もあなたです。いくら、魔術師として優秀だからといってルシーダ殿下に万が一のことがあったらどうなさるおつもりだったんですか! もう少し自重してください」
「はい」
パルサティラも気圧されているようだ。
「大体、いつもお気楽極楽な性格で周りにどれだけ迷惑かけていると思ってるんですか! ナトゥラムがいっつも怒っているのを私は何でだろうと不思議に思ってましたけれど今回のことで、よっく理解できました。あなたは何かしようと思うだけで、トラブルを呼び寄せてしまう最高のトラブルメイカーなんですよ。自重してください。あなただって優秀な魔術師なんですから、魔力を封じられたら単なる路傍の石も同然。しかも、そんなことになったらラカシス卿の手を煩わせるのは必至。ああ……あの美しいラカシス卿があなたなんかのために心を痛めるなんて事があってはなりません!! そうですよね?」
「は、はい……」
「ああ、ラカシス卿。私に十分な魔力があればあなた様のお傍でお仕えするのに。いいですか! パルサティラ卿、あなたは非常に恵まれているんですよ。魔法の才能には恵まれ、宮廷魔同士として一流と認められ、しかもラカシス卿からも寵愛を受けている。ああ、羨ましい、憎ッたらしい。決してラカシス卿の迷惑のならないように人生を送りなさい!! あの、天才の心を痛ませるだなんて何を考えてらっしゃるんですか!!」
「は、はい」
「頷くなんて誰でもできるんですよ。あなたはそもそも、ルシーダ殿下にべったりついていますが、花婿候補としてこの私認めたわけではございませんよ。いくら、六貴族しかもルシーダ殿下に歳の近い独身貴族だからって、私の目の黒いうちには婿をとるだなんて許しません!!」
「は」
「ちょっと、パル。頷き人形になってるわよ」
パルが勢いに乗って返事しそうになるのを私は横からつついて止めた。はっと気がついたのかパルはそれまで遠くを見ていた顔から急に生気が戻った。
さすが、ライアの説教だわ……。
「ルシーダ殿下なぜ、パルサティラ卿をお庇いになるのですか! ……はっもしや、私のいない間に二人がそんな……まさか……私は信じていたのに、こういうことは突然やってくると申しますが私になんの断りもなくそういう関係になるだなんて……」
「ま、待って」
「ああ、ひどすぎます。殿下。私は殿下の教育係。日々の陛下お悩みを相談してくれればよろしいものを。ましてや、恋バナ、であればよりいっそう力になって差し上げるのに」
「いや、人の話を聞いて」
「ルシーダ殿下は独りで決められてしまって、私はどうしたらいいのでしょう。もしかして、コレが花婿の父親の心境なのですね?」
なのですね? じゃ、ないですよ、ライアさん……。
「違うって、ライア。私とパルはそういう関係じゃないの」
ライアの両肩をむんずと掴んで、かくかくとライアを揺さぶりながら私は一語一語聞きやすいようにはっきりと言った。
「……ええ、そういう関係……じゃない?!」
「違います。ライア。私はまだ、その恋人とかは……」
ライアは正気に帰ったのかふうッと深いため息を就て姿勢を正した。
「とにかく、今後は気をつけてくださいませ」
結局、無断外出はいけない。ってことなんだろうか。