私たちは、丘の上の公園で待ち合わせをした。ここは、信じられないことに噴水があるのだ。私は、マロウに来て初めてみた。大理石でできた噴出し口から勢い良く水が吹き上がると、細かい粒子となり空にきらきらと星が光るように散った。たまらなくそれが綺麗で、私はぽうっと見とれてしまう。待ち合わせの時刻より前に私は来ていた筈なのだけれど、アリフはすでに噴水の淵に腰掛けて待っていた。
 アリフは私に気がついて手をふりつつも、ちょっと機嫌が悪そうだった。
 なんだ?
「……なんだその格好」
 頭のてっぺんからつま先まで値踏みするように私の全身を見たあと、ため息交じりで呟かれた。今日は、動きやすいように丸首の白いシャツと、薄い緑色の地で、濃い緑色のパイピングがされているボレロに草の模様が入った空色の布のベルトに、裾がふわっとした茶色のパンツだ。靴だって装飾のないブーツだし。街で歩いている人とそうかわらないはずだ。
「どっかおかしい?」
「デートだといってるのに、どっからみても少年じゃないか!」
 不機嫌そうに呟かれて、一瞬私はぽかんとしたけれど、合点がいって頷いた。長い髪の毛は後ろで一つに結ばれているわけだから、どうみても声変わり前の少年の格好だ。
 あれ? それはなんだか、いまいち納得いかないし、不愉快なんだけど。
「……ったく。来いよ」
 アリフはいまさら着替えさせるのは面倒だと感じたのだろう。私に手招きをしてすたすたと自分だけ歩いていってしまった。
「どこいくの?」
 私は小走りにアリフとの距離を縮めて、隣に並んだ。背の高いアリフを少し見上げて問いかけると、アリフは自慢げな表情をして答えた。
「まずは、港だ。今日は港で市が開かれてんだ。いつものより小規模だけど、面白いぜ」
 マロウをあげての一月に二回ある大市よりも、小さい市はいつでもどこでもマロウはやっている。船の往来が多いので、漁船でとれた魚の取引や遠い異国から仕入れた品物の取引には事欠かない。私は大市ぐらいしか見物したことないので、地域密着の小さな市は一度見てみたかった。丘から港まで続く坂道を二人で並んで下っていく。
 マロウはとても綺麗に整備されたところで、上下水道は完備されているし、道は石畳。王都は、家は土色の壁でできているけれど、ここは真っ白の壁でできていることが多い。青い空と、海にそれが映えて美しい。町の人たちは、重い荷物を抱えて坂を上り下りするにはロバに手伝わせているようで、港にいくまでの間、ロバに荷物を載せてのんびりと坂を上っている人を何人かみつけた。
 昼間は、海から陸に向けて風が吹き、夜は陸から海に向けて風が吹く土地なので昼間は暑くて夜は寒い。それでも、時折マロウの町を通り抜ける風は心地よかった。
 だんだんと港が近づくに連れて、たくさんの屋台がひしめき合っているのが見えた。食べ物を売っている屋台も多く出ているようで、ところどころから食べ物を焼くための煙がでている。おなかを刺激するいい匂いも漂ってきた。
「すごいっ」

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